アンティーク陶磁器のフィギュアの種類 ~大理石のような質感を持つパリアン磁器~

美術館や博物館で目に留まる、美しい大理石の彫刻の数々。それらの質感をフィギュアに活かしたパリアン磁器をご存知でしょうか。

英国が生んだパリアン磁器のアンティーク・フィギュアや縮小された彫像は、古くから人々に愛されてきました。

今回は白くなめらかな触感を持つ、パリアン磁器についてご紹介します。

パリアン磁器の歴史

イギリスの黄金期とも呼ばれるヴィクトリア朝(1837~1901年)は、欧米各国を旅行する貴族たちが持ち込んだ、エキゾチックな装飾品に人気が集まった時代です。

中でも人気を集めたひとつに、大理石の彫刻がありました。しかしこれらを手に入れることができたのは、ほんの一部の上流階級の人々に限られていました。

1840年代初頭の英国では、自宅に大理石の彫刻、あるいはそれに準ずるものを手に入れたいと思う人々の欲求に応えるべく、大理石によく似た質感を持つ新たな磁器が誕生することになりました。

「パリアン」という名の由来

英国でパリアン磁器の開発を、どの陶器メーカーが最初に行ったかは幾つかの諸説がありますが、一般に広く知られている陶器メーカーはウィリアム・テイラー・コープランドと、トーマス・ギャレットが提携していた、コープラント&ギャレット社です。

コープランド&ギャレット社は1845年ごろに開発、製造を始めた新たな磁器が、新古典主義の彫刻の素材であった大理石に似ているため、「彫像用磁器」と名付けました。

また、同等の磁器を開発したウェッジウッドは、その名をイタリアのトスカーナにある採石場にちなみ、「カッラーラ」と呼んでいます。

同時代に開発したミントンは、大理石の産地として知られるギリシャのパロス島を意味する「パリアン」という名称を付けました。

このミントンが名付けた「パリアン」という名称が、1851年ごろまでに一般的に使用されるようになりました。

生産のピーク時である19世紀後半には80を超える陶器メーカーが、パリアン磁器の彫像やフィギュア、食器やその他の製品を生産するようになったのです。

パリアン磁器とは

パリアン磁器は、細かく白い長石をメインとしています。レシピは各陶器メーカーによって異なりますが、最終的に2種類のパリアン磁器が生まれることになりました。

ガラス質のフリット(高い接着性を有する半溶融物質)を取り入れたパリアンは軟質磁器に、長石の割合が高くフリットが含まれていないパリアンは、硬質磁器として分類されています。

長石の割合が増えるとボディはよりガラス化しやすくなり、ビスク焼きの磁器よりもなめらかで、大理石のような質感になりました。

この長石がパリアン磁器に特有の強度、そして淡いクリーム色をした半透明性をもたらしていたのです。

ヴィクトリア朝時代に頂点を極めて

パリアン磁器の開発、生産は、王侯貴族といった特権階級だけでなく、大理石と同じ美しさを持つクオリティの高い装飾品を中流階級の人々も手に入れることができるようになりました。

著名な芸術作品をコピーしたものを作成するという発想が確立されていたこの時代、彫刻家のベンジャミン・チェバートンは、大きなブロンズ像や大理石の彫像の測定値をニーズに合わせて縮小するための機器の特許を、1844年に取得します。

これによって陶芸家たちは、有名な彫刻家の作品のレプリカを作ることが可能になりました。

パリアン磁器はヴィクトリア朝時代に大変な人気を誇り、19世紀末までには、邸宅や装飾品にこだわる家庭の住まいに、必ずひとつはパリアン磁器の製品があるとまで言われていたほどです。

英国からアメリカまで、人気を博したパリアン磁器

パリアン磁器はフィギュアはもちろん、シェイクスピアやナポレオンといった著名な人物の彫像、有名な彫刻のレプリカなど、さまざまな題材を取り上げ作成されました。

英国では花は植物などをモチーフにしたもので装飾した水差しや、花瓶などが人気を集めていました。

またパリアン磁器はアメリカでも大きな成功を収め、バイロンやミルトンの胸像や天使や子ども、動物や鳥といった生物を描いたフィギュアも多く生産されています。

イギリスの陶器メーカーも多くがパリアン磁器のフィギュアの生産をしています。特に名を知られているのが、先に述べたように初期に開発をしたコープランド&ギャレット社やミントン、ウェッジウッドです。

その他にもウースター磁器工場、ロビンソン&リードビーター社、WHゴス陶器工場などが、パリアン磁器生産で知られています。

芸術作品を身近に感じて

パリアン磁器の誕生は、たとえそれがコピーであっても、大理石の彫刻を手に入れられない一般の人々にとって、芸術作品を身近に感じられることを意味していました。

大理石に次ぐ最高の素材と呼ばれていたパリアン磁器は、その美しい質感とマットでありながら絹のような触感で、多くの人々を夢中にさせました。

パリアン磁器という言葉を聞きなれない方も、実際にそのフィギュアを手に取ってみてはいかがでしょうか。

ヴィクトリア朝時代の人々を虜にしたその意味が、きっと理解できるに違いありません。

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