アンティークドールの世界 ~多くの人々を魅了したビスク・ドール~

『アンティークドール』という言葉を聞いて、最初に頭に思い浮かぶのはビスク・ドールではないでしょうか。

潤んだような大きな瞳と小さな唇、洗練された衣装に気品のある佇まい。ビスク・ドールは誕生時から現代まで、非常に高い人気を誇る人形です。

今回は人々を魅了してやまない、ビスク・ドールについてご紹介します。

ビスク・ドールとは 

ビスク・ドールとは陶磁器製の人形のひとつで、ビスク焼き、もしくはビスケット焼きと呼ばれる製造法で、一部分もしくは全体が作られているものを指しています。

同時期に誕生した磁器製のチャイナ・ドールは釉薬をかけられ艶のある質感でしたが、ビスク・ドールは素焼きの磁器に着色がされています。

ビスク・ドールは通常一度焼成され、その後塗装されて肌の色合いや顔の特徴を施し、再度焼成されています。

一度目の焼成後に色が追加され二度焼成されるビスク・ドールは、他の陶磁器製の人形に比べ、より人間の肌に近いリアルな質感を持っていました。

初期のビスク・ドールの頭部は厚めの粘土ペーストを型に押し込んだものでしたが、これはのちに薄く滑らかになって、複雑な詳細を表現できるようになりました。

ビスク・ドールの特徴

ビスク・ドールの特徴は釉薬を使用していないこともあり、マットで滑らかな質感です。

通常、頭部がビスク磁器で作られていて、本体は他の材料で作成されており、これは人形の体までビスクで制作してしまうと重量が増えてしまうためでした。

そのため本体は布や革、または木材や張り子、パルプやおがくずなどの材料でできていました。

ビスクでできた頭部はネックラインの下に小さな穴が開けられており、本体に接続するために手で縫うことができるようになっていたのです。

より豪華に、よりリアルになったビスク・ドール

多くの場合、ビスク・ドールは既に頭部と本体が接続されていましたが、最高級品のもののパーツは、家で組み立てられるよう別々に販売されていたそうです。

時代を経て人形全体がビスク焼きのものも誕生しますが、これはオール・ビスク・ドールと呼ばれています。

ビスク・ドールはさまざまなサイズで生産されており、大きな瞳と小さく開いた唇が特徴的で、その表情は「ドーリーフェイス」と名付けられました。

初期の頃は単純な髪の毛や瞳、口が成形されていましたが、技術の進化とともによりリアルさが求められ、まばたきができるガラス製の瞳や人間の髪を使ったディテールに凝ったかつら、はめ込み歯を持つものさえ登場するようになりました。

ビスク・ドールの美しい衣類と装飾品

ビスク・ドールはその美しいリアルな顔だけでなく、非常に凝った優雅な衣装や装飾品も特徴と言えるでしょう。

頭部にはミニチュアの花や羽根、レースや宝石などを含む豪華で華やかなアクセサリーを身に着けていました。

流行したヴィクトリア朝時代に合わせ、人間の髪を使いエレガントに装ったヘアスタイルのかつらを付け、小さなガラス製のピアスを付けたものも登場しています。

脚部はリアリスティックに塗装されており、ストッキングや革のブーツを履いているものもありました。

ビスク・ドールの種類

ビスク・ドールは主に大人の女性の姿をしたファッション・ドール、そして赤ちゃんの姿をした”べべ"と呼ばれるベビー・ドール、そして特定の衣装や個性を表現したキャラクター・ドールの3種類に分類されています。

ファッション・ドールは10代から大人の女性をモデルとしており、その時代の流行を反映した衣類を着ています。

人形遊びとファッショナブルな洋服を楽しむのを兼ねており、裕福な家庭で特に人気がありました。

19世紀半ばのフランスで流行となったファッション・ドールは、パリのかつらメーカーやファッションデザイナー、靴メーカーの職人が非常に凝った人形の装身具を生産するようになりました。

これらの人形はミニチュアのマネキンとしても扱われており、ファッションに敏感な上流階級の女性たちの評判となったのです。

ベビー・ドールの誕生

19世紀後半までは、人形と言えば大人の女性をモデルとしたものが主として生産されていました。

しかしこの時代から、人形メーカーは子どもの姿をした人形や、赤ちゃんをモデルとした人形を生産し、これらは非常に高い人気を得ることとなりました。

ベビー・ドールは子どもたちのために製造され、その時代の流行の子ども服を着ていました。

同時代には特定の衣装を着て個性を表現したキャラクター・ドールの他、ヴィクトリア女王などを含む有名人をモデルとしたビスク・ドールも登場しています。

ビスク・ドールの世界に触れて

ビスク・ドールは人形の種類の中でも、最も人気の高いものと言えるでしょう。

今まで人形に触れる機会があまりなかった方でも、ひと目その姿を見れば納得できるに違いありません。

薔薇色に染まった頬に潤んだような大きな瞳、今にも言葉を発しそうな可憐な唇。そして繊細で豪奢な髪型に、ディテールに凝った優雅な衣装。

誕生したときから現在まで、人々を虜にしたビスク・ドール。一度実際に手に触れて、その魅力を実感してみてはいかがでしょうか。

 

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