産業革命の時代に生まれ、それまでのレース産業の流れを大きく変えたのがマシンレースです。
マシンレースはハンドメイド・レースと変わらないクオリティを生み出すために、歴史ととも大きく発展を遂げてきました。
上流階級の人々だけでなく、レースを身近な存在にしてくれたマシンレースの種類について、今回はご紹介します。
マシンレースの種類
ボビンネット・マシン
マシンレースの中でも歴史的に最も有名なものが、ダービシャ―出身のジョン・ヒースコートがノッティンガムで1808年に特許を取得したボビンネット・マシンです。
このマシンは彼がボビンレースと区別するために名付けた「ボビネット・マシン」とも呼ばれています。
プレーンなレースネットを生産するこのマシンの特許を取得したとき、ヒースコートは弱冠25歳の青年であり、彼の目的はハンドメイドのボビンレースと見分けがつかないほど精巧なレースをマシンで生産することでした。
ヒースコートのマシンは六角形のメッシュを作成するとき、4辺は2回ねじれ、2辺が交差しているため、「2ツイストネット」とも呼ばれています。
1831年にはダイアモンド型のメッシュで4つの側面に3つのねじれのあるマシンが発明され、これは「3ツイストネット」、または「ブリュッセルネット」と呼ばれています。
ボビンネット・マシンで作られた模様のないシンプルなレースネットはとてもなめらかで、ハンドメイドのレースネットと区別がつかないほどでした。
また、ボビンネット・マシンは非常に精巧に設計されており、その後のさまざまなマシンレースに影響を与えています。
プッシャーマシン
プッシャーマシンは1812年、サミュエル・クラークとジェームズ・マートによって発明されたマシンです。
初期にはシンプルなネットを生産していましたが、1840年代にジャガード織りを取り入れ、シャンティイ・レースのような複雑なハンドメイド・レースを精巧に模倣することができました。
プッシャーマシンは素材に上質な綿、モヘア、絹などを使用し、糸は生地を斜めに横切って縫われ、ハンドメイドのボビンレースの綿密なハーフスティッチを作成することができました。
プッシャーマシンはきめ細やかで精巧なデザイン、そして大きなショールなどを作成するのに向いていたマシンと言われています。
リバーマシン
リバーマシンは1813年、ノッティンガムでジョン・リーバースが発明した、ジョン・ヒースコートのボビンネット・マシンが改良されたマシンを指します。
初期のマシンではシンプルなネットを生産していましたが、のちにジャガード織りがマシンに取り入れられて、複雑で細かなデザインを作成できるように進化を遂げています。
リバーマシンは19世紀半ばまでには、ヴァランシエンヌ・レース、メヘレン・レース、ホニトンやバッキンガムシャー・レースなど、多くの種類のハンドメイドのボビンレースのコピーを生産していました。
1880年代には黒くて重い縁取りのあるスパニッシュ・レースが大量に生産されています。
このように19世紀にリバーマシンで作成されたレースは非常に数が多く、この時代のマシンレースを手に入れると、殆どがリバーマシンでできたものとも言われてています。
そのきめ細やかで繊細なレースはハンドメイドのボビンレースを凌駕するとの声もあり、かつては上流階級のステイタスであったレースを多くの人々が手にすることができたのは、リバーマシンの発展の成果であると言えるでしょう。
レースカーテン・マシン
リバーマシンと同じく、ジョン・ヒースコートのボビンネット・マシンを改良されて作られたのが、1846年にノッティンガムでジョン・リブジーが発明したレースカーテン・マシンです。このマシンはノッティンガム・レースカーテンマシンとも呼ばれています。
正面から見たレースカーテン・マシンのフレームは、リバーマシンのフレームに似ていますが、リバーマシンのメッシュが六角形になるのに比べ、レースカーテン・マシンは正方形のネットを作成します。
このマシンは非常に長いレースを生産することができたため、ヴィクトリア朝時代以降の窓に合った長いレースのカーテンが人気を博しました。
1851年に行われた展示会では長さ4m60cm、幅は1m80cmもの大きさのレースカーテンが展示されています。
時代とともに姿を変えて
アンティークレースはヨーロッパの歴史とともに、その用途や作り方、そしてデザインが移り変わってきました。
しかしどんなに長い時間を経ても、人々を魅了するその素晴らしさに変化はありません。
ふと目に留まり、心を射抜いたアンティークレースは、誰かがどこかで、大切な思い出とともに慈しんできたものです。
一度アンティークレースを手に取って、その魅力を感じてみてはいかがでしょうか。以前の持ち主と同じように、その精巧な美しさに心を奪われるに違いありません。
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