アンティークレースの種類 ~イギリスとフランスのボビンレース~

アンティークが好きな方にとって、特に高い人気を誇る国がイギリス、そしてフランスです。

さまざまな年代の、数多くのアンティークの品々が見つかるふたつの国では、アンティークレースも多くの種類が存在します。

今回はイギリスとフランスのボビンレースの代表的なものをご紹介します。

フランス

ル・ピュイ・レース

ル・ピュイ・レースは、フランスは中西部、オーヴェルニュ地方の街のル・ピュイ=アン・ヴレで生まれています。

絹や綿で作られた黒いレースは非常にエレガントで、ギュピールレース(刺繍モチーフを繋ぎ合わせたレース)と呼ばれることもあります。

デザインは太い糸でモチーフを囲むものや、光沢のある綾織りのカルトゥーシュと呼ばれる装飾枠飾り、または細い糸で作られた四つ織りも見られます。

モチーフはバラをかたどったロゼットと呼ばれるものや、羽根のようなフォルムの麦穂、細かい帆立貝模様があります。

シャンティイ・レース

パリから北へ約40キロほどの場所にあるシャンティイは、黒のレースで知られています。

初期の17世紀初頭にはクリーム色の絹糸で作られており、この時代のものは「ブロンド・レース」と呼ばれ、黒い絹糸を使ったものは「ブラック・ブロンド・レース」と呼ばれています。

シャンティイ・レースは他のレースと同様に、フランス革命時代に衰退しましたがナポレオン1世の時代に再び人気となっています。

シックな黒が魅惑的なレースで、シンプルなリゾー(網地部分)に挟み込み用の太糸で、繊細なモチーフが強調されています。

モチーフは主に花がメインで、バラやカンパニュラ、アイリスなどが描かれました。

縁取りが「スカラップ・エッジ」と呼ばれる、帆立貝のような曲線を描いていることも特徴です。

カーン・レース

カーン・レースはフランス北西部にあるカーンで生まれたレースを指します。

象牙色をした光沢のある絹が素材で、細かな編地はシンプルなリゾーよりも高い密度のトワル(生地)であるのが特徴です。

デザインはシンプルな花柄で、花開いたデイジーや麦穂などが太い撚り糸で縁取られました。

カーン・レースはその色合いから「ホワイト・ブロンドレース」とも呼ばれています。

リール・レース

フランス北部にある街リールは、かつて存在したフランドルの国境と、ヴァランシエンヌの近くに位置し、レースの街として知られていました。

リール・レースはシンプルなフランススタイルで、編み目はとても細かく、糸が編み込まれているのではなく、ねじり交差させたリゾーで、明確なトワルはありません。

リゾーは四角や六角形のメッシュで、挟み込み用の太糸でモチーフが描かれているのが特徴です。

モチーフは緩やかな曲線で描いた花や巻き型で、18世紀後半に非常に人気のあったレースです。

イギリス

ホニトン・レース

イギリスの最も有名なレースのひとつがホニトン・レースです。ホニトン・レースはイギリス南西部にあるデヴォン州の小さな街、ホニトンの周辺で作られていたものを指しています。

ホニトンのレース技術はフランドルから来たレース職人からもたらされたと言われていますが、確かな証拠は存在していません。

ホニトン・レースはモチーフを別々に作り、編地に付ける方法で知られています。

モチーフは花や葉などのボタニカルなデザインや、蝶や鳥などの生き物も含まれており、詰め物がされていたのが特徴です。

きめ細やかなホニトンレースは約6.5㎠の大きさを作るのに10時間はかかると言われ、主に襟や袖口、縁取りやベールなどに用いられました。

ホニトン・レースは英国王室の人々に愛され、ヴィクトリア女王の婚礼の衣装やロイヤルファミリーの洗礼式などに使用された事で知られています。

バッキンガムシャー・レース

「バックス・レース」とも呼ばれるバッキンガムシャー・レースは、イギリス南東部のバッキンガムシャーを中心に生産されました。

フランスのリール・レースととても良く似ているため、「イングリッシュ・リール・レース」と呼ばれることもありました。

リゾーはシンプルなハニカムステッチが多く見られ、素材は主に綿を使用し、時には絹を用いることもありました。

デザインは花や果物を取り入れており、チューリップやカーネーション、バラなどが描かれています。

トーション・レース

最も古いレースのひとつであり、ヨーロッパ中で作られていたのがトーション・レースです。イギリスではミッドランド地方で作られていました。

とてもシンプルなレースで、レースメーカーが最初に習得する技法とも言われています。

使用するボビンの数が限られており、太いレース糸を使用して簡単に安く生産できるために「乞食のレース」と呼ばれることもあったそうです。

素材は丈夫な綿や亜麻で直線に織られ、幾何学模様のデザインが用いられています。

歴史の波に翻弄されながら

フランス革命、産業革命という時代の大きな荒波に呑み込まれていったイギリスとフランスのレースたち。

しかしそれでも、ふたつの国が残したレースはそのエレガントなデザインと工芸品のような美しさで、王室の人々を始め今もなお人々を魅了してやみません。

ふたつの国のアンティークが好きな方は、それぞれの特色を持つレースに触れてみてはいかがでしょうか。きっとその魅力に引き込まれることでしょう。

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