儚げな糸を紡いで生み出された芸術品、エレガントで繊細なアンティークレースは古くから多くの人々の心を魅了してきました。
時を経てもなおその魅力を増すアンティークレースを一度手に取れば、その精巧さと美しさに陶然となることでしょう。
ここでは衣類からインテリア、食のシーンなど多くの楽しみ方ができる、アンティークレースについてご紹介します。
アンティークレースの始まり
透かし模様の織物は古代エジプトの埋葬地で発見されており、また簡単な技術は中東で生まれたとの諸説があります。
しかし現在の「レース」と呼ばれるものは15世紀後半から16世紀にかけてのヨーロッパが発祥です。
レース技術はイタリアのヴェネチア、もしくは北ヨーロッパのフランドルで最初に開発されたと言われています。
この時代のレースは修道院で作られ、修道士のローブや宗教的な儀式に使われました。
それらの中には虫眼鏡でなければパターンが見えないほど精巧なものさえあったそうです。
華やかな発展を遂げるレース
修道院から始まったレースは下着の装飾品の時代を経て、1600年までにフランドル、イタリア、スペイン、フランス、イギリスなどのヨーロッパの都市で、高品質のものが作り出されるようになりました。
フランスではアンリ2世の王妃、カトリーヌ・ド・メディシスが出身地のイタリアはヴェネチアからレースメーカーをパリに呼び入れました。彼女の影響もあり、上流階級にレースが大流行となったと言われています。
上流階級の人々を虜にして
16世紀のヨーロッパでは、男性も女性も競うように衣服にレースを付けるようになりました。中でも有名なものが「ひだ襟」です。
これはシャツやブラウスの襟の仕立ての一種で、取り外しできるようになっており、エリザベス1世を始め、肖像画でこれを見た方も多いのではないでしょうか。
レースは衣類の中で最も高価な部分でした。レースは襟の他に袖口、女性の肩、手、頭の部分を覆い、ガウンを飾るのに使われています。
さらにレースの人気は衣類だけには留まらず、カーテンやベッドカバーなどインテリアの装飾にまで及ぶようになったのです。
加熱するレースの人気
王室や貴族、聖職者たちによって、レースはヨーロッパ中で爆発的な人気となりました。手作りのレースは非常に高価であり、これらを使用することは彼らにとってステイタスでもあったのです。
しかし一方で、レース輸入に莫大な金額が費やされているのを回避するため、多くの国が自国での生産を奨励し始めます。
イタリアのレースメーカーたちはフランスの高い賃金に惹かれますが、職人たちの離国を恐れたヴェネチアは、17世紀にこれを国家犯罪とまでみなすようになりました。
また、エリザベス1世は「ひだ襟」の最大幅を規定する法律を可決します。他の国も貿易やレース使用の制限をかけるようになりました。しかしレースの人気は衰えず、その結果、密輸が盛んに行われるようになったのです。
レースを編む人々
レースの人気によって、レース商人はとても裕福になりましたが、作り手であるレースメーカーは非常に低賃金でした。
レースを実際に作成していたのは女性たちであり、農家の主婦たちは家計を助けるために安い賃金であってもレースを編み続けたのです。
また、修道院や孤児院で子どもたちはレース編みで生計を立てられるように教わり、貧しい人々や刑務所の作業所もこれに習いました。
17世紀末にはレース編みは子どもの教育の重要な一環として考えられ、レース指導の学校も設立され、男の子でさえレース編みを教わることとなったのです。
ハンドメイドのレースの行方
しかし18世紀末には男性はレースの着用を止め、レースのスタイルはシンプルなものに変わって行きました。
その頃までハンドメイドのレースの人気は衰えることはありませんでしたが、時代によってその手法は大きく変化を遂げました。産業革命の始まりです。
1809年にイギリス人ジョン・ヒースコートによりレース機械が製造され、1870年までにほぼ全てのハンドメイドのレースは、機械で編むことができるようになりました。
そのクオリティは高く、専門家でさえ手作りのレースとの区別ができないほどでした。
イギリスではレースを生業とする者たちによって暴動まで起きたほどですが、殆どの人々が雇用先を失くすことになりました。
中にはアメリカへと渡りその技術を伝えた者もいましたが、ヨーロッパでの手作業によるレース産業はこの時代に終わりを告げたのです。
アンティークレースの魅力に触れて
作り手と糸が編み出したレースは産業の時代を終えても、美しく繊細な姿で今もなお、多くの人々を魅了しています。
ヨーロッパの王室を始め、上流階級の人々の絶大な支持を得たエレガントなレース。衣類のために作られたものから、インテリアに関するものまで種類は幅広く、また編み方もさまざまな手法が存在します。
アンティークレースは一度ぜひ手に取って眺めて頂きたいアイテムのひとつです。そのきめ細やかでエレガントな世界にきっと胸がときめくに違いありません。
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