アンティークの製品の中でも、特に人気の高いのがティーカップやソーサー、ポットといった紅茶やコーヒーのテーブルウェアです。
銀器や陶磁器などの素材や、それぞれのブランドによって異なる表情を持つアンティークのテーブルウェアに心惹かれる方も多いのではないでしょうか。
今回は紅茶のテーブルウェアが生まれる理由となった、アフタヌーンティー発祥の地として知られる英国の紅茶の歴史についてご紹介します。
イギリスの紅茶の始まり
紅茶がイギリスに伝わったのは17世紀半ばの事でした。お茶はアジアから世界へ広がり、1560年頃ヴェネチア経由でヨーロッパに伝わりました。
イギリスで紅茶が流行となったのは、チャールズ2世の王妃であるキャサリン・オブ・ブラガンザの影響です。
ポルトガル出身の彼女は幼少時代から紅茶を好んでおり、王室を訪れた人々に紅茶をふるまい、17世紀にはファッションとして紅茶が貴族社会に広まりました。
コーヒーハウスの誕生
紅茶の人気は貴族だけにとどまらず、上流階級のエリートたちにも及びます。実はイギリスでは紅茶よりも先にコーヒーが先に人気を博していたのをご存知でしょうか。
最初のコーヒーハウスは1651年にオックスフォードでオープンし、17世紀後半にはイギリス全土の街に多くのコーヒーハウスがありました。そして一般の人々に紅茶を紹介したのは、このコーヒーハウスだったのです。
女性たちの紅茶の流行
男性たちが社交場であるコーヒーハウスに集まり、交流をはかり談義をする間、女性たちの間でも紅茶の人気が高まりました。
その理由のひとつに自宅で紅茶が飲めるよう、ルーズリーフティ―を販売するコーヒーハウスが現れた事が挙げられます。紅茶が非常に高価であったこの時代、それらを購入できるのは裕福な上流階級の人々だけでした。
女性の社交場、ティーパーティー
男性のように頻繁にコーヒーハウスを利用する事はなかった上流階級の女性たちは、お茶会と称して家に友人を招く際に紅茶を提供するようになりました。
豪奢でエレガントなポットやカップが用意されたティーパーティーは、女性たちにとって社交の場であったのです。
紅茶の課税
一方、コーヒーハウスから広まった紅茶は英国の一般の人々の間でも人気となりました。紅茶の人気が高まるにつれ、お酒の売り上げが激減するほどでした。酒類販売への税金を収入源としていた政府は1676年に紅茶へ課税し始めます。
コーヒーハウスは販売のためにライセンスを取得せねばならず、さらに紅茶への課税は18世紀半ばまでには119%にも達します。この重税により、英国では紅茶の密輸業が盛んになってしまうのです。
ミルクを入れる習慣
密輸された紅茶でさえ高級品であったため、多くの密輸業者は他の葉や使用済みの紅茶を再乾燥させたものまでを混ぜ始めます。この時代から、粗悪品の紅茶の味を和らげるため、ミルクを入れる習慣が始まったそうです。
1784年に紅茶の税金を119%から12.5%に引き下げた事によって、英国内の紅茶の密輸業は終わりを告げました。しかし1875年に食品医薬法が厳しい罰則を下すまで、紅茶は混ぜ物を多く含んだ粗悪品のままだったのです。
アフタヌーンティーの始まり
アフタヌーンティーは、紅茶の消費量が増え続けた19世紀初頭、第7代ベッドフォード公爵夫人であるアンナ・マリア・ラッセルが始めたと言われています。
当時の上流階級では朝と午後8時頃に食事をするだけか、その他に昼に軽い食事をとるだけだったため、彼女は午後の遅い時間に彼女の私室で紅茶と軽いスナックを嗜む習慣、「アフタヌーンティー」を始めました。
ベッドフォード公爵夫人が友人を「アフタヌーンティー」でもてなすと、それはとても好評で上流階級の女性たちの評判となりました。多くの女性たちがそれに倣い、19世紀半ばにはアフタヌーンティーは流行となったのです。
ティーガーデンがオープン
ロンドンでは1730年頃、人気のある庭園が紅茶を提供し始めました。美しく花が咲き誇るガーデンで、上流階級の人々はダンスと花火を楽しみ、最後は紅茶で締めくくられたのです。
この発想は瞬く間に流行となり、イギリス中でティーガーデンがオープンしました。通常は土曜日と日曜日にガーデンがオープンし、午後にダンスと催しものが行われ、紅茶が振る舞われるようになりました。
紅茶とテーブルウェア
イギリスで長く人々に愛され続けてきた紅茶は、上流階級の人々を魅了した事により、紅茶にまつわる多くの美しいテーブルウェアが誕生しました。
アジアからお茶がヨーロッパに輸入された時、中国のお茶は伝統的に取っ手のないカップ ― 湯呑茶碗のようなもので飲まれていましたが、紅茶が人気となった時には英国の習慣に合うように、取っ手のあるカップが求められました。
紅茶はとても高級品であったため、裕福な人々のために銀器で食器類が作られ、のちに陶磁器のテーブルウェアが生まれていったのです。
アンティークのテーブルウェアで優雅なひと時を
いつもは簡単に済ませてしまうブレイクタイムも、時にはお気に入りのアンティークのテーブルウェアで、優雅に過ごしてみては如何でしょうか。
テーブルコーディネートにこだわり、丁寧に淹れた紅茶を味わう時間は、暮らしと心に潤いを与えてくれるに違いありません。
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