アンティークの中でも、最も多いファンを持つと言われているジャンルが陶器です。その中でも、より繊細な磁器に惹かれる方も多いはず。
白く艶やかな質感と繊細でありながらもしっかりとした造り。そんなアンティーク陶器の美しさを代表する磁器は、どのようにしてヨーロッパで誕生したのでしょうか。
今回はヨーロッパアンティークの陶器の中から、磁器の歴史をご紹介します。
ヨーロッパ磁器の歴史
古い歴史を持つアースンウェアやストーンウェアと異なり、ポーセリン/磁器がヨーロッパで生産されたのはずっと後の時代です。
7世紀の唐時代から既に磁器を開発していた中国から、マルコポーロが小さな白い磁器の花瓶を持ち帰ったのが始まりでした。
16世紀にポルトガルとオランダがアジアへの貿易ルートを確立し、一定の量が輸入できるようになると、磁器はヨーロッパの王室や宮廷で人気を博すことになりました。
しかしヨーロッパ人は磁器を製造法の謎を解き明かす事ができず、さまざまな方法を試みても、中国製の磁器ほど美しいものを生産する事は長い間できずにいたのです。
イタリアのアンティーク陶磁器の歴史
最初にヨーロッパで中国の磁器を模倣したものを生み出した国はイタリアです。
トスカーナ大公フランチェスコ・デ・メディチの後援のもと、建築家であり彫刻家、舞台デザイナーであったベルナルド・ブオンタレンティが1575年から1587年のあいだ、磁器の開発に取り組みます。
ブオンタレンティはフィレンツェにある工房で磁器の生産に成功しましたが、これは中国のようにカオリンを原料とした硬質磁器ではなく軟質磁器であり、真の磁器とは言えませんでした。
この軟質磁器は、「メディチ・ポーセリン」と呼ばれています。
その後もヨーロッパでは各国が製造開発を続けていましたが、18世紀になるまで中国で生産されるような高いクオリティの磁器の製造法は発見できませんでした。
ドイツのアンティーク陶磁器
ヨーロッパ産の磁器の始まりは1708年、ドイツのマイセンからでした。
ポーランド・リトアニア共和国の国王であり、ザクセン選帝侯であったアウグスト2世は1700年、自らを錬金術師と名乗っていた18歳のヨハン・フリードリッヒ・ベトガー捕らえます。
ベトガーは幽閉されて当てのない実験を続けていましたが、その後アウグスト2世の命令により磁器の開発に乗り出します。
彼は物理学者のエーレンフリート・ヴァルター・フォン・チルンハウスの協力のもと、ドレスデンの研究所で磁器の製造開発を試みました。
最初に完成した陶器は赤い色をしており、これは「ベトガー・ストーンウェア」と呼ばれています。ベトガーはのちに白磁の製造に成功し、ここからヨーロッパ磁器の歴史がスタートします。
1710年にはヨーロッパの最初の磁器工場、のちの国立マイセン磁器製作所となる王立磁器ザクセン工場が設立されました。
他国に磁器の製造の秘密が漏れることを恐れたアウグスト2世はベトガーを軟禁し続け、次に染付けに挑戦していた彼は37歳の若さでこの世を去ることになりました。
フランスのアンティーク陶磁器
アウグスト2世によりマイセン磁器工場が発展を遂げると、フランス王ルイ15世も硬質磁器の製造を奨励します。
最初の工場がパリ郊外のヴァンセンヌに設立され、陶芸家たちにマイセン磁器の秘密を解き明かすように命じ、1750年代までに、彼らはマイセンで働いていた陶工たちを引き抜いて雇い始めるまでになりました。
このヴァンセンヌの工場はルイ15世の公妾であり、その時代の芸術の後援者でもあったポンパドゥール夫人によって1756年にセーヴルへと移され、王室の後援と財政的支援を受け続けました。
マイセン磁器を模倣することから始まったセーヴル磁器は、18世紀後半には独自の装飾スタイルを持つメーカーとして進歩を続けます。
セーヴル磁器の発展を助けたのが、1768年頃、フランスのリモージュの町の近くにカオリンの鉱床が発見されたことでした。
1770年にセーヴルは硬質磁器の生産に成功し、セーヴル焼きはヨーロッパを代表するメーカーのひとつとなったのです。
英国のアンティーク陶磁器
その頃英国では、磁器の開発はドイツやフランスに遅れをとっており、主にガラス状の材料を使い軟質磁器を生産していました。
硬質磁器を開発すべくイギリスは独自に研究を続け、その結果材料に石鹸石や動物の骨灰を取り入れ、これがボーンチャイナを生み出すこととなりました。
このように18世紀からヨーロッパの各地に磁器工場が生まれ、その結果、中国の磁器の輸入は大幅に減少し始めることとなりました。
ヨーロッパの磁器の物語を感じて
中国から海を越えてたどり着いた磁器は、需要に応えるためにヨーロッパ各国で生産され、新たな芸術を生み出しました。それらは今もなお世界中のコレクターを惹き付けてやみません。
美しく繊細なアンティーク磁器の歴史に触れてみれば、その物語から磁器の魅力をより理解できることとなるでしょう。
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