アンティークのアイテムの中で最も身近な存在のひとつが、アンティーク陶器です。
カップとソーサー、食器や花瓶、人形など、陶器でできたアンティークの品々は暮らしに取り入れやすいものと言えるでしょう。
今回は長い歴史を持ちながら今もなお、生活を豊かに彩ってくれるアンティーク陶器についてご紹介します。
ヨーロッパのアンティーク陶器の種類
ヨーロッパの陶器、セラミックスはギリシャ語の粘土を意味する「Keramos」に由来しており、数多くの種類が存在します。
代表的なものとして、アースンウェア/土器、ストーンウェア/炻器、ポーセリン/磁器の3つに分かれます。これらは使用された材料、焼成するのに必要な温度によって分類されています。
アースンウェア/土器
アースンウェア/土器は陶器の種類の中で最も歴史が古く、シンプルに作られた柔らかい陶器です。
粘土を材料として成形したものを600℃~1200℃未満で焼成したものを指します。他の陶器よりも厚みがありますが、欠けやすいのが特徴です。
多孔質であるため、水などの液体の保管や食器としての実用性は限られていましたが、釉薬の進化により不浸透性の土器の作成が可能となりました。
また白い釉薬を使い、中国やヨーロッパの磁器を模倣することができるようになりました。
工芸品のようなアースンウェアは手描きの装飾などを施した素朴な風合いで、釉薬を使ったアースンウェアはソフトで軽い触感が特徴です。
ストーンウェア/炻器
ストーンウェア/炻器は、アースンウェア/土器よりも高い温度である1100℃~1200℃で焼成される陶器を指します。
ストーンウェアはとても丈夫で実用性があり、無孔のため水を吸収しない性質を持ち、釉薬を必要とはしません。釉薬を使用するのは装飾のためとなります。
ストーンウェアは中国で先に作られていましたが、ヨーロッパでは適切な粘土がなく、釜も効率的ではなかったため、発展したのは中世後期以降となります。
現代の食器には磁器やボーンチャイナよりもストーンウェアが多く使われており、アースンウェアよりもしっかりとした作りで、表面はガラスのようなつるりとした触感を持っています。
ポーセリン/磁器
ポーセリン/磁器は一般にカオリンを含んだ材料を、1200℃~1400℃の温度で焼成された陶器を指します。
ポーセリンの色は白やグレー、またはクリーム色で、頑丈できめ細やか、液体を吸収することはなく、表面に透明感があり、指で弾くと金属音に似た音を発します。
磁器は中国の唐時代(618年~907年)に製造されましたが、ヨーロッパで生産が始まるのは18世紀になります。
マルコポーロが1295年に磁器をヨーロッパへ持ち帰り、アジアで貨幣として使われていた「白い貝殻/ポルセーラ貝」が磁器に似ていたため、「ポーセリン」という言葉が生まれました。
ポーセリンは焼成温度や材料により、硬質磁器、軟質磁器、ボーンチャイナの3種類に分類されます。
硬質磁器/ハードペースト・ポーセリン
硬質磁器はヨーロッパでは「真の磁器(リアル・ポーセリン)」とも呼ばれています。
1400℃前後の高温で焼成され、カオリンやぺツンツエ(白不子、長石質の岩石)の化合物を材料としています。
硬質磁器は非常に硬く頑丈で、軟質磁器よりも高温の液体に強い性質を持っており、輝くような見た目を持ち、半透明性です。
軟質磁器/ソフトペースト・ポーセリン
軟質磁器は「人工磁器/アーティフィシャル・ポーセリン」とも呼ばれ、材料によって異なりますが、硬質磁器よりも低い1100℃~1250℃で焼成されます。
軟質磁器は初期のものは傷つきやすく、また熱い液体を注ぐと突然割れてしまうこともあり、硬質磁器よりも弱いところがありました。
しかし焼成温度が低いため、硬質磁器よりも多くの色彩を使える利点を持っています。
アンティークの硬質磁器、軟質磁器を見ただけで区別するのは非常に困難と言われており、商品にはならない欠けてしまったふたつの磁器から、その違いを学ぶ人もいるほどです。
ボーンチャイナ
ボーンチャイナはイギリスで18世紀に生まれた磁器の一種です。動物の骨灰を材料に使ったため、”ボーン”が名前に付けられることになりました。
ボーンチャイナは陶磁器の中で最も強く、美しい白色と半透明性が特徴です。また強度が高いため、他の磁器に比べて薄く生産することが可能でした。
開発初期から20世紀後半までボーンチャイナといえばほぼ英国製品であり、ウェッジウッド、ロイヤル・ドルトン、ミントン、フォートナム&メイソンなど主なイギリス製ブランドがボーンチャイナを製造しています。
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