ロイヤルウースター フィギリン 『ハートの女王』/『ウィンザー城の舞踏会』
古くからヨーロッパの王侯貴族を虜にした、卓上やキャビネットを彩る人形の置き物(フィギュア)は、さまざまな種類の陶磁器で作られています。
マイセンの白磁に始まり、オランダのデルフト焼きやスペインのブエン・レティ―ロ磁器など、各国で特色を活かした陶磁器が生み出されました。
今回は英国から始まった、ボーン・チャイナのフィギュアについてご紹介します。
ボーン・チャイナの歴史
ヨーロッパ中で磁器の開発を試みていた18世紀、ドイツやフランスに比べ遅れをとっていたのがイギリスです。
その時代は主にアーティフィシャル・ポーセリン(人工磁器)と呼ばれていた軟質磁器が英国の主流でした。
そんな中、ダブリン出身の画家であったトーマス・フライが骨灰を加えた軟質磁器を開発し、1749年に特許を取得しました。
トーマス・フライはガラス職人のエドワード・ヘイリンとともにボウ磁器工場を設立しています。
初めて動物の骨灰を取り入れる手法が確立されたものの、レシピはまだ不完全であり、これをさらに発展させたのが、英国四大名窯のひとつ、スポード社のジョサイア・スポードです。
ボーン・チャイナは耐久性に優れており、非常に美しい乳白色で英国で最も愛される磁器となりました。
ボーン・チャイナとは
ボーン・チャイナは動物の骨灰50%、陶土(カオリン)25%、陶石(コーニッシュ・ストーンなど)25%の割合で、1回目の焼成は1200℃~1300℃、2回目に1050℃~1100℃の温度で焼成されます。
ボーン・チャイナはガラス質材料を含んだ軟質磁器よりも焼成の際に損失が少なく、生産しやすいのも大きな利点でした。
骨灰を加えることで乳白色となり、重量が軽いのも特徴です。
透明感があり、カップやプレートなど、薄く作られたボーン・チャイナの製品の前にライトを置くと、透けて見えるのが分かります。
2回の焼成と釉薬をかけられることにより、ボーン・チャイナの製品の表面はとてもなめらかな質感に。
陶磁器の中で最も強度に優れていることでも知られており、繊細なかたちをしたフィギュアにはぴったりな素材となりました。
英国を代表する陶器メーカー、ミントン
スポード社が完成させたボーン・チャイナは、他の多くの陶器メーカーに取り入れられました。
スタッフォードシャーのストーク・アポン・トレントに、トーマス・ミントンが設立したミントン社は、1798年にボーン・チャイナを導入しています。
それまでは食器をメインとしていたミントンは、1820年代になると装飾用磁器としてフィギュアに力を入れるようになりました。
ヴィクトリア朝時代のミントンはセーブル磁器にも劣らぬ人気と実力を誇り、英国を代表する陶器メーカーとなったのです。
多くの陶器メーカーに導入されたボーン・チャイナ
コールポート フィギリン『素晴らしい瞬間』1795年には、シュロップシャーにジョン・ローズが設立したコールポート社が、スタッフォードシャーのロングポートで、1794年にジョン・ダヴェンポートが設立したダヴェンポート社もボーン・チャイナを取り入れています。
またロイヤル・ウースターとして知られる1751年に設立したウースター磁器工場、1793年にリバプールで設立されたハーキュラネウム工場も同じくボーン・チャイナの製造を試み、生産に乗り出しました。
「英国の陶芸家の父」ジョサイア・ウェッジウッド
19世紀になると、1781年にスタッフォードシャーで設立したニューホール磁器が1810年に、1820年にはヨークシャーのスウィントンに設立したロッキンガム窯が、ボーン・チャイナの生産をスタートしています。
「英国の陶芸家の父」と呼ばれているジョサイア・ウェッジウッドがスタッフォードシャー、バーズレムに1759年に設立したウェッジウッドは、1812年にボーン・チャイナを導入しています。
ウェッジウッドは1812年から1829年の間、そして1878年から現在に至るまでボーン・チャイナの生産を行うようになりました。
フィギュアの高い人気を誇るロイヤル・ドルトン
ロイヤルドルトン フィギリン『ロージーのお出かけ』
英国陶磁器のフィギュアの中で、最も人気の高い陶器メーカーのひとつは、ロイヤル・ドルトンではないでしょうか。
ロイヤル・ドルトンは、ジョン・ドルトンとジョン・ワッツが1815年にロンドンのランベスに陶器会社を設立したのが始まりです。
ロイヤル・ドルトンは多くのフィギュアの製造を行い、1884年頃からボーン・チャイナを導入、生産し始めます。
1889年にはロイヤル・ウースターのモデラ―であったチャールズ・ノーケを雇い入れ、ノーケはフリーランスのフィギュア制作者、レスリー・ハラディンと契約します。
ハラディンのフィギュアは圧倒的な人気を誇り、今もなお、根強いファンが多く存在するほどです。
ボーン・チャイナのフィギュアに触れて
ロイヤルドルトン フィギリン『 ラブレター』
英国が独自の手法で生み出したボーン・チャイナは、透明感のあるアイボリーカラーと、頑丈で軽さが特徴です。
食器はもちろん、細やかなフォルムを持つフィギュアも、保存やお手入れのしやすい品種と言えるでしょう。
イギリスのアンティークが好きな方なら、きっと魅了されてしまうボーン・チャイナのフィギュアたち。
ぜひ手に取って、その魅力を感じてみてはいかがでしょうか。
↓アンティークショップEglantyne(エグランティーヌ)はこちらから↓