アンティークレースの魅力 ~ボビンレースの見分け方~

アンティークの品々を前にすると、以前の持ち主のことを想像する事はありませんか?

人々に愛されてきたものたちが、時間や国を超えて今の場所にたどり着くまでの物語は、アンティークが持つ魅力のひとつと言えるかもしれません。

その中で、作り手の歴史までも垣間見えるのがアンティークレースです。繊細できめ細やかなレースは、一体いつ、どのような人々が作っていたのでしょうか。

今回はアンティークレースの種類のひとつ、「糸の宝石」とも呼ばれるボビンレースについてご紹介します。

ボビンレースとは

ニードルポイント・レースとともに、ヨーロッパで発展を遂げたボビンレースは、ボビンと呼ばれる小さな糸巻きと糸で織られたレースを指します。

デザインは羊皮紙に描かれ、ピローと呼ばれる織り台の上にこれを載せて、デザインの輪郭に沿って小さな針を細かい間隔で刺します。

ペアで使われるボビンには糸が軽く結びつけられており、パターンに刺された針に糸を巻き付け、ボビンをねじったり交差させたり、編み込んだりして織物を作り上げていきます。

ボビンとパターンに刺す針の数は、作品の大きさとデザインの細かさに反映して数十個から数百個を超え、熟練したレースメーカーたちは長時間に渡って、手早く細かい作業をこなしていたのでした。

ボビンレースの見分け方

アンティークレースはそのエレガントなデザインや芸術的な技巧を愛でるのはもちろん、その作品がいつの時代に、どこの国や地域で作られたかを知ることも大きな喜びのひとつです。

アンティークレースを購入する際もその種類を詳しく知っていれば、適正な価格なのかどうか、価値があるものなのかの判断にも繋がります。

ボビンレースにはレースが作成された国や地域によってその名称やデザインが異なり、さまざまな種類が存在します。

これらの種類を理解して、どんなボビンレースが好みに合っているのか、どの時代のものを探したいのかなどのヒントにしてみてはいかがでしょうか。

ボビンレースのデザインを知って

ボビンレースには、トワルと呼ばれる生地部分とレゾーと呼ばれる網地部分が分担して作られる非連続糸式、または一緒に作られる連続糸方式のふたつの手法が存在します。

そしてレースのデザインから、作成された年代や場所、そしてその名称を知る事ができます。

例を挙げると、17世紀半ばまでに作られたボビンレースは、主に3角形、またはダイアモンド型や円の幾何学模様や抽象的なデザインでした。

18世紀半ばまでは装飾用の花や果物、渦巻き模様や流れるようなラインに変化しており、このようにレースのデザインを知る事で、いつの時代に作られたものなのかが理解できるようになっています。

作られた地域の特色を持つアンティークレース

ヨーロッパのさまざまな地域で発展を遂げたレースですが、作成したそれぞれの国や街がレースのデザインに特色を持っています。

レース産業が生まれたばかりの頃はデザインは限られたものでしたが、レースメーカーが腕を上げ、その完成度が芸術的とまで言われるようになると、それまでのデザインから新しいパターンを生み出す方向へと変化して行きます。

これはその地域のレース作りに携わる人々の誇りが生んだ結果と言えるでしょう。職人の人々は他の国の模倣では飽き足らず、作られた地域や街の名を称えるオリジナルなレースを確立しようとしていました。

レースメーカーたちの努力の結晶とも言うべきレースのデザインの特徴を知れば、もっとアンティークレースの魅力に引き込まれて行くに違いありません。

ボビンレースの糸の素材

アンティークレースのデザインや編み方から、時代や地域を判断するのが難しく感じる原因のひとつが、16~18世紀のレースを19世紀に模倣する風習があったことです。

しかしこの時代の作品は、昔のものよりも粗い素材の糸を使ったために、パターンが拡大してしまっている事で模倣されたものと見分ける事ができます。

また、16~18世紀のボビンレースはその時代のニードルポイント・レースと密接な関係があり、デザインも良く似ていたために混同してしまう事もあります。この場合にも、糸の素材を確認してみましょう。

ボビンレースでは、糸の素材は1833年までは亜麻が主流で使われていました。18世後半から19世紀初頭にかけて、飾り紐レースや流行したレースには、黒と白のシルクの糸が時々使用されています。なお、シルクはニードルポイント・レースでは滅多に使われていませんでした。

1833年以降には亜麻糸はまだ使用されていましたが、この時代より多くのボビンレースにコットンのガス糸が使用され、光沢や強度が増していることが分かります。

ボビンレースに魅了されて

The Lacemaker

ニードルポイント・レースと並び、王室貴族を虜にしたヨーロッパ発祥のボビンレース。職人たちの熟練した技や時間、そして果てしない労力から生まれた糸の芸術は、一度手にしてみればきっと魅了されるに違いありません。

次回は各国のボビンレースの種類についてご紹介していきます。

↓アンティークショップEglantyne(エグランティーヌ)はこちらから↓

最新情報をチェックしよう!