陶磁器のアンティークドールの種類と歴史 ~つややかな肌を持つチャイナ・ドール~

長い時代を経て、子どもたちの愛する人形はさまざまな変化を遂げてきました。

数多くの人形の中でも最もリアルに、そして美しく作成されて人々を夢中にさせたのは陶磁器製のアンティークドールかもしれません。

今回は陶磁器のアンティークドールの歴史、そしてチャイナドールについてご紹介します。

陶磁器のアンティークドールの歴史

全ての時代を通して、人形制作者やメーカーの目標のひとつに「いかに人間によく似た人形を作るか」が挙げられていました。

木や布でできた時代を経て、18世紀のヨーロッパでは、それまでの人形よりもさらに人に近付いたワックス・ドールが登場します。

時を同じくして、ヨーロッパでは中国から伝わった磁器の開発が進み、ドイツのマイセンが生産を始めたのは、ヨーロッパのアンティーク陶磁器 ~ポーセリン/磁器の歴史~でご紹介したとおり。

磁器は原産国にちなんで"チャイナ″とも呼ばれ、ヨーロッパ中の王侯貴族を始め裕福な人々を魅了した素材でした。

それまで人間の外観を作成するのに苦労していた人形メーカーは、この磁器の発明により絶妙な表情を持つ顔、リアリスティックな外観、それに似合う美しい衣装を持つ人形を生み出すことができるようになったのです。

陶磁器アンティークドールの種類

高温で焼成された磁器はその抜けるような白さや薄さ、さらには透明感が特徴です。

そのなめらかな質感は人々を熱狂させ、磁器を使ってさまざまなタイプの人形が生み出されました。

陶磁器製の人形は主に3つの種類に分類されます。磁器で作られたチャイナドール、パリアンで作成されたパリアンドール、そしてビスク焼きで作られたビスクドールです。

『アンティークドール』と聞くと、チャイナドールとビスクドールが同じグループに入れて語られることもありますが、このふたつは製造法、見た目もともに異なります。

チャイナドールは白い釉薬をかけた磁器で作られており、ビスクドールは素焼きの磁器で作られているものを指しています。

チャイナ・ドールの始まり

ヨーロッパの最も古いチャイナドールは1750年ごろに作成されたという諸説があります。

しかし現存されているのは大量に生産された1845年ごろのもので、チャイナドールは1840年代から1940年代までに主にドイツで生産され、1840年~1890年代に人気のピークを迎えます。

磁器の人形はそれまでの流行の中心であったワックス・ドールと人気を争いました。ワックスに比べ、磁器は冷たい肌ざわりで硬い質感が特徴です。

残念ながらワックス・ドールは高温で溶けてしまう、あるいは温度差が激しい場合にひび割れが起こるという難点がありました。

磁器製の人形も壊れやすいという欠点はあったものの、優雅で洗練されたその姿は瞬く間にヨーロッパ中で人気を博すこととなりました。

チャイナ・ドールの外観

チャイナドールは高温に耐えうる特殊な粘土と水の混合物から成形され、高温で焼成されており、塗装され光沢のある外観を得るために釉薬で艶をかけられています。

代表的なチャイナドールは、顔と頭、首、肩までが磁器でできています。人形の本体や手足は藁やおがくずなどが摘められた布や革、または木でできており、磁器に開けられた小さな穴で縫い付けられていました。

のちに手足の成形にも磁器が使用され、さらには足先から頭まで、すべてのパーツが磁器で作られたチャイナドールも登場しています。

チャイナ・ドールの特徴

チャイナドールは数センチから1m弱までさまざまなサイズで作られており、顔と肩の磁器は釉薬が加えられているため、つややかな印象です。

当時の流行したファッションに適応するよう、やや傾斜がかった肩をしています。

髪の毛と顔は塗装されており、古いタイプのものは額の髪の毛は中央で分かれており、耳の周りにカールした髪型が見られました。

1850年以降にはファッショナブルなヘアスタイルが反映され、かつらを施したものも登場します。

ドイツで作られたチャイナドールは黒い髪と青い目をしたタイプが多くありましたが、茶色の瞳やガラスの目を持つものも販売されました。

チャイナ・ドールの陶器メーカー

多くの陶磁器工場がチャイナドールの生産を行いましたが、中でもKPMベルリン、マイセン、ロイヤル・コペンハーゲンがその製造で知られています。

これらの製品には企業のマークが記されていますが、小さな工房で作成されたものはマークが付けられていないものも多く存在します。

そのためコレクターは、チャイナドールの髪型から年代や製造工場を見分けることが多く、これはファッションやヘアスタイルの流行が人形作成に大きく反映しているためと言えるでしょう。

洗練された工芸品、チャイナ・ドールに触れて

中国からヨーロッパへ海を越えてやってきた磁器は、食器やフィギュアだけでなく、人形の分野においても大きな成功を納めました。

チャイナドールは磁器の美しさとつややかさ、そして繊細さを兼ねそなえた工芸品とも呼べる人形です。

アンティークドールの中でも非常に高価なこの人形を見かけた時は、上流階級の人々を魅了した秘密に触れてみてはいかがでしょうか。

↓アンティークショップEglantyne(エグランティーヌ)はこちらから↓

最新情報をチェックしよう!